「新年の会」オンラインで開催【医機連】
行政の幹部らのあいさつをライブ配信
日本医療機器産業連合会(会長=松本謙一氏、医機連)は、1月6日㈬に、Web会議システムのZoomウェビナーによる「新年の会」を開催した。例年、年明けに開いていた賀詞交歓会は新型コロナウイルス感染症の影響にともない中止にして、それに代わり、行政や関係機関の幹部らがオンラインであいさつする形式で実施された。
革新的医療機器の創出へ
新年の会の冒頭、あいさつした松本会長は昨年11月に行われた官民対話で、医機連の行動指針として、『革新的医療機器の創出に向けて』のグランドタイトルのもと、①イノベーションの加速に向けた環境整備②医療機器の国内供給体制の整備③DX(デジタルトランスフォーメーション)による医療データの利活用④国際展開への対応――の4点について説明したことを報告した。
このうち、医療機器の国内供給体制の整備については「コロナ禍で人工呼吸器不足が問題になっているが、約10年前の新型インフルエンザ流行時の記憶がよみがえり、官民一体となった第3セクターによる備蓄センターの整備が非常に大事だと改めて感じた」と述べた。
DXによる医療データの利活用では「個人情報保護法に対して医療基本法というような法律がないと、なかなか国内では臨床研究ができない、とのお話をアカデミアの先生方からよくお聞きするので、今後もさまざまな方向性で検討していかなければならないだろう」と語った。
最後に、松本会長は「医療機器産業や医薬品産業では異業種からの参入が増えているが、いたずらに競争するのではなく、協業によるシナジー効果を出していくことが大事になる」と呼びかけた。
研究開発の成果をコロナ感染防止へ
このあと、内閣官房健康・医療戦略室の八神敦雄次長は「皆さまの研究開発の成果が新型コロナウイルス感染症の容態把握や、治療法改善などを通じて、重症化率の低下につながっている。引き続き、感染拡大防止対策への皆さまのご理解、ご協力をお願い申し上げる。一方、政府の健康・医療戦略は昨年4月から第2期に入っており、医療分野の先端的研究や、新産業の創出に取り組んでいきたい」と述べた。
診療報酬改定に向け重要な年になる
次いで、厚生労働省医政局経済課医療機器政策室の堀岡伸彦室長は「今年は令和4年度診療報酬改定に向けて議論が行われる大変重要な年となる。医療機器の制度については皆さま方からいろいろな課題をいただいている。コロナ感染症への対応でも明らかになった課題もあるので、医療現場が必要とする医療機器を安定的に供給することが可能になるように、適切に価値が評価される仕組みを業界の皆さまと一緒に構築していきたい」と語った。
画期的医療機器の実用化を促進
また、厚生労働省医薬・生活衛生局の鎌田光明局長は「昨年9月に薬機法を改正し、条件付き早期承認制度や先駆的医薬品等指定制度などを設けた。今後は添付文書の電子化などの施行も控えている。また、AIやデジタルへの対応がわが国の課題であり、それに対応して昨年、プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略を公表した。こうした制度の適切な運用を通して有効かつ安全な医療機器を速やかに届けるとともに、画期的な医療機器の実用化促進に取り組んでいきたい」と述べた。
新しい医療に資する産業創出へ
続いて、経済産業省商務・サービスグループの畠山陽二郎商務・サービス審議官は「経産省ではコロナ禍で人工呼吸器や体温計など国民の命に関わる物資の確保、国内生産体制の強化に取り組んでいる。昨年は医療機器開発で大きな変革がみられ、家庭用医療機器の新しい区分の創設や、プログラム医療機器の承認と保険収載により、医療機器産業を取り巻く環境はますます変化していくと考えられる。経産省では関係省庁と協力しながら技術開発などを通して、新しい医療とヘルスケアに資する産業の創出に取り組んでいきたい」とした。
医療機器開発リーダーの育成へ
さらに、文部科学省研究振興局の高木秀人研究振興戦略官は「文科省では橋渡し研究戦略的推進プログラムでジャパンバイオデザインプログラムを支援しており、医療機器開発のリーダーとなる人材育成に大きな期待を寄せている。革新的イノベーションを実現するためには、その中心となって活躍する人材の育成が非常に重要となる。医機連の皆さまには多大なご尽力と継続してご支援を賜り厚くお礼申し上げる」と語った。
プログラム医療機器の審査を迅速化
次に、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の藤原康弘理事長は「昨年、規制改革会議でご指摘を受けたAIや治療アプリなどのプログラム医療機器に関して、審査に特化した審査部門をPMDA内に設置して審査の迅速化に努めていく。また、国際部門の再編を行いアジア1課と2課を新設し、部長級の職員をアジアの主要各国の専任担当として配置し、企業の皆さまが各国で展開していく際のサポートを行っていく。そのほか、昨年6月にPMDAアジアトレーニングセンターがAPECの医療機器分野の研修センターとして正式認定された。今後、各国の規制当局の若手職員の研修活動を行っていく」とした。
医療機器分野の研究開発に期待
一方、日本医療研究開発機構(AMED)の三島良直理事長は「AMEDは昨年、新型コロナウイルス感染症への対応に追われながら、第2期中期計画を始動させた。その中で医療機器は医薬品や再生医療などの主要モダリティと共に、医療分野の研究開発の大きな柱として期待されている。また、ヘルスケア分野も国民の健康寿命延伸と新産業創出の重要分野と考えており、デジタルデータを含め、ヘルスケア機器やテクノロジーの標準化の支援に取り組んでいきたい。今年度のコロナ対策では医療機器開発に総額139億円の政府予算が追加され、小型人工心肺装置など95の研究開発を支援しており、早期に社会実装されることを期待したい」と述べた。