年頭所感 「辛丑(かのとうし)」の年、発展の前触れ…【 商工組合日本医療機器協会 理事長・中島 孝夫】
謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年も皆様方のご指導、ご協力を賜りたく、何卒宜しくお願い申し上げます。
昨年は、令和になって初めての新春を迎え、夏には東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、希望に満ちた一年になると誰もが思ったのではないでしょうか。ところが中国・武漢で最初に感染拡大が確認された新型コロナウイルスが、あっという間に世界中に広まり真夏でもマスク着用となる異様な一年でした。人々の生活や企業の活動も一変させ、死活問題の企業も多く輩出することになり、リーマンショック以上の打撃であります。オリンピック・パラリンピックも延期となり、まさにコロナ一色の一年でした。
テニスの全米女子オープンで大坂なおみ選手が2度目の優勝という快挙を成し遂げるも18年の優勝ほど盛り上がりに欠けていたように感じるのはコロナ禍に加えて、アメリカで人種問題が勃発したことも要因だと思います。
11月にはアメリカ大統領選挙があり、共和党ドナルド・トランプ氏と民主党ジョー・バイデン氏との熾烈な争いは過去最高の投票率を持って、バイデン氏に軍配が上がった。負けたトランプ氏にも7000万票以上支持者がいることは尊重しなければならないと思いますし、絶対に分断は起きてはならない事です。ラグビーでいうノーサイドの精神をもって双方一致団結し、良い方向に進んでほしいと願います。
さて、国内に目を向けると尖閣諸島の問題が浮かんできます。医機連は厚生労働省から国内企業における海外展開は諸外国と比較しても少ない傾向にあるため積極的な対応が求められております。これを受けてビジョンに沿った取組の一環として医機連みらい戦略会議の下に日中連携組織を設置し、海外展開への一歩を踏み出そうとしています。より一層のグローバル展開を目指すなら、中国の医療機器市場に目を向けることは、日本の医療産業界にとって必要なことだと思います。
ただ、政治的な問題は無視できないのではないでしょうか。尖閣諸島の海域では日々、両国間で緊張が走っており、全く予断を許さない状態ですので、一日でも早く解決していく方法が見つかる事を祈ります。
1972年9月29日、当時の田中角栄首相と中国の周恩来首相は、北京で共同声明に署名し、「恒久的な平和友好関係を確立する」ことで一致しました。これがいわゆる「日中国交正常化」である。さらに、1978年8月12日には、「日中平和友好条約」が署名され、両国は新たな歴史的一歩を開くことになった。ここに至るまでに影で大変に尽力をされた政治家がいる、松村謙三氏であり(1971年8月21日、88歳で死去)、高崎辰之助氏である(1964年2月24日、79歳で死去)。中でも高崎辰之助氏は1962年、中華人民共和国を訪問し、寥承志氏(リァオ・チョンヂー)との間で「日中総合貿易に関する覚書」(LT貿易と呼ばれた)に調印した。日中関係を良い方向に尽力された先人たちの努力が無駄にならないように願いたい。
そもそも何故、尖閣諸島問題が起きたのか調べてみました。一つは、1968年、国連アジア極東経済委員会の調査で地下資源が見つかったことで、まず、台湾が1969年、領有権を主張した。続いて、1970年に中国が領有権を主張し始めました。尖閣諸島周辺の海域で豊富な天然資源が発見されてからであります。二つ目は、太平洋に出るためのルート確保であります。
現在、中国が太平洋に出るルートは、台湾と海南島を抜ける航路しか確保されておりません。尖閣諸島を領有すれば、太平洋に抜ける第二のルートが切り開かれる事になります。
中国から多くの文化が伝えられてきたのは事実であり、日中間の貿易も、今はなくてはならない状況です。今後も中国と良い関係を、継続するにはどうすれば良いのか。
ここからは政治の分野になるので、平和的に解決し、さらに進展されることを祈ります。
一方、米・中関係、日・韓関係の先行きも心配になります。新型コロナウイルスがなければ、昨年春には習近平(シー・ジンピン)国家主席が来日される予定でしたが、叶わぬことになりました。ともあれ政治的な課題が多々ありますが、日本が置かれた立場は重要だと思います。
さて、今年もコロナ禍の環境下ではありますが、日医機協は、本年も、医薬品医療機器等法をはじめ、会員企業の業務に係る関係法令の講習会開催などに努めてまいります。具体的には昨年に引き続き協会事業として以下の重点8事業を展開して参ります。
1、各種講演会の開催
コロナ禍に於いても、医療機器産業を取り巻く経営環境の変化に対応し、多種多様な情報収集に努め、会員企業にとって有益な情報を引き続き提供します。
平成18年度より実施している「高度管理医療機器販売業等の営業管理者及び医療機器修理業の責任技術者のための継続的研修」、その他「わかりやすいQMS講習会」、「診療報酬講習会」などを開催します。
昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、一部開催を見送った講習会や継続的研修等の大会場での講習会は自粛を余儀なくされましたが、代わってWeb聴講を初めて試みました。
Web聴講期間を設け、その期間内に受講者は、自分の都合に合わせて聴講できるという新たな試みが、功をなして聴講者も増えました。
講習会につきましては、今後も引き続き工夫し、東京都をはじめ、PMDA、関係官庁にもご協力をお願いしながら、積極的に展開してまいりたいと思います。これらの講習会も長年、医療機器産業を支えてこられた会員企業の皆様方のお役に立てるよう、医薬品医療機器等法をはじめ、法規制にも円滑に対応できますよう、内容を充実させていきたいと考えております。
2、医工連携事業の推進
平成25年度より継続して取り組んでいる医工連携では、令和3年度も、全国の各県並びに各地区の公益産業振興センターとの共催で、昨年はWebを通して展示・商談会を開催致しました。この本郷展示・商談会も今年で8年目を迎え、製販企業と、ものづくり企業との間で、マッチングの成果も出ております。本年は、この展示・商談会を、当協会が所有する医科器械会館で、十分な感染対策を講じ、実際に開催することができるように検討し、再び、東京・本郷地区に、全国有数の、ものづくり企業が参加できるようにしていきたいと思います。
その意味から、本年度もこの医療機器産業が集積する文京区の本郷台地を「メディカルヒルズ本郷」と標榜し、継続して当協会の医工連携のキャッチフレーズとして、全国に広げ、さらにマッチングの成果も重ねていきたいと考えています。
3、国際モダンホスピタルショウ等の活用の見直し
毎年夏に開催される当展示会は、延べ約8万人参加というビッグイベントですが、昨年の開催はコロナ禍の影響で中止となりました。本年も会場開催されるかどうかは未定ですが、オリンピック・パラリンピックの開催が決定していますので、感染防止の対策を講じ、開催する可能性もあります。いずれにしても国際モダンホスピタルショウ等の出展について、行うのか否か、または違う展示会に出展するか、本年は検討していきたいと思います。
4、関係官庁との連携
関係官庁との連絡会や、公益財団法人医療機器センターへの協力などを通じて、医療機器業界の方向性や課題、医薬品医療機器等法をはじめ法制度の検討に関わり、厚生労働省、経済産業省等の行政機関に対しても積極的に要望・提案を行います。特に医療機器法の制定に向けて前進できればと思います。
5、会員企業間の交流
製造、販売およびサービス業など、業態の枠を越えた企業間の交流に努めるほか、全国の中小企業団体や企業とも協力関係を築いていきます。協会の伝統となっている会員企業の皆様のための野球大会、ボウリング大会、そしてフットサル等の事業を福利厚生の一環として皆様とともに本年も続けて参りたいと思います。ただし、十分な感染対策を講じるのが、困難な場合は見送ることも視野に入れたいと思います。
6、会員のための医科器械会館の管理・運営
協会の活動拠点である当会館は、本年も感染対策を講じ、会員企業の皆様が安心して気兼ねなく、自由に立ち寄っていただく場として活用していただき、会議室も安価で提供致しますので、自社の会議室のごとく、ご使用して頂ければ幸いに存じます。これからも快適性と永続性の確保を図り、会員のための使いやすい会館として管理・運営を行って参ります。
7、災害対策・災害救援活動・BCPなどの研究
医療機器団体として大災害に備えた対応を検討します。なお、日医機協は、戦前より会員企業のご協力により、災害時には救援物資や義援金を提供するなどの活動を行っている歴史があります。今後も変わらぬ姿勢で参ります。
8、創立110周年祝典
当協会は、本年で、創立110周年を迎えます。大変におめでたい事でございます。本来ならばご来賓の方々をご招待し、盛大な記念式典を開催いたしたいところではありますが、コロナ禍の状況で、開催するのは如何なものかと危惧するところであります。すでにご連絡しました通り、本年の賀詞交歓会は見送りとさせて頂きました。併せて110周年記念祝典も見送りになるかも知れませんが、ご参加の皆様方の安全を第一に考えて、検討していきたいと思います。
記念誌については引き続き、10年刻みで歴史の記録を残し、後世の方々のためにお役に立てるよう、編纂したいと思います。
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以上の8項目を、本年も重点項目として推進していきたいと思いますので、皆様のご指導、ご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。
また、昨年に引き続き協会として、医療機器法の早期制定に向けて、少しでも進展があるように声を上げ続けてまいりたいと思います。
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最後に、全国の医療機器業界団体の皆様、そして、医療機器に関連するものづくり企業の皆様とも交流・連携を深めながら、日本の医療機器業界の発展に、少しでも貢献したいと考えております。
皆様のこの1年のご健勝とご多幸、そして新型コロナウイルスの早期収束を心よりお祈り申し上げ、また、当協会へのご指導とご鞭撻を心より、重ねて、お願い申し上げて、新春の挨拶に代えさせていただきます。