コロナ禍の医療機器産業動向を報告【医機連】
オンラインで「メディアセミナー」開催
日本医療機器産業連合会(会長=松本謙一氏、医機連)は、11月25日㈬午前11時から、オンラインによる「第7回医機連メディアセミナー」(コロナ禍における医療機器産業界の取り組みについて)を開催した。メディアセミナーでは日本画像医療システム工業会(JIRA)の田中修二氏(島津製作所)が「医療機器の感染対策に関わる設計思想と営業活動について」、日本医療機器販売業協会(医器販協)の五嶋規夫氏(やよい)が「流通面における新型コロナウイルス感染症の影響について」をテーマに、それぞれ講演した。
無人問診受付システムで感染リスク低減
最初に、日本画像医療システム工業会の田中氏は、医療機関での感染リスクの低減に向け、島津製作所で開発した『無人問診受付システム』を紹介した。「外来受付に無人問診受付機を設置することで、スタッフが患者に接触することなく、一般外来患者は一般待合室へ、感染疑いのある患者は感染対策エリアへ、それぞれ誘導することができる。無人問診受付機は体温測定のサーモカメラが付属。本体操作タッチパネルは抗菌仕様となっている。呼び出しも待合室内の診察案内画面に表示される」と外来受付の無人化による感染リスク低減への取り組みを紹介した。
移動型X線撮影装置で感染防止
また、新型コロナウイルス感染症患者の肺炎診断のため隔離された病室やICU(集中治療室)のベッドサイドで利用可能な島津製作所製の『回診用X線撮影装置』を取り上げ「肺炎疑いのある患者に行う胸部単純X線撮影では、院内感染対策として患者の動線を考え、動線が分けられる場合は撮影室で、動線が分けられない場合はポータブルな回診用X線撮影装置の活用が有効になる」と説明した。
同社の回診用X線撮影装置の特徴にふれては「回診用で胸部撮影が可能。本体は450㌔㌘強の重量ながら、パワーアシスト技術で簡単に移動ができる。撮影画像はその場での確認や、院内画像ビューワでの診断も可能となる。患者確認はICカード認証やバーコードリーダーでできる。本体は拭きやすく清潔を維持できるデザインを採用。今後の感染症増加に備え、製造工場の量産体制も構築した」と感染症に対応した医療機器の設計思想を説明した。
コロナ禍で90%以上の企業が売上減
「医療機器流通アンケート調査」結果を報告
次いで、日本医療機器販売業協会の五嶋氏は、医器販協で実施した『新型コロナウイルス感染症による医療機器流通への影響に関するアンケート調査』の結果を報告した。アンケートは加盟企業36社に依頼し、回収率は100%となる。
価格交渉の進捗状況の見通し(6月末時点)については「4割強の企業で、例年に比べ価格交渉に時間がかかり、価格面でも厳しい交渉が続いているものの、例年通りに価格交渉が進んでいる企業は5割強となっている」と報告した。
経営への影響(4~5月)については「売り上げは90%以上の企業で減少し、増加した企業は1社もなかった。業務量は減少した企業が半数で、増加した企業は約17%となった。多くの製品で在庫量が増加し、特定保険医療材料についても40%近い企業で在庫の増加がみられた」とした。
勤務体系の2月以前と3月以降の変化については「営業職・配送職の在宅勤務は、2月以前は実施してない企業は34社だったが、3月以降に実施してない企業は13社となった。車通勤については以前から導入している企業も多く、コロナ禍で新たに車通勤を導入した企業は少ない。フレックス勤務は増加したが、他の対策に比べると導入のハードルが高い結果になった」と明かした。
医療機関への訪問営業への影響(3~5月)については「34社の企業は影響があったと回答。多くの医療機関では訪問規制がかけられたほか、各社の判断で訪問自粛を行っていた場合も多かった。大半の医療機関が訪問・営業場所や時間を限定・指定していたことが判明した」と述べた。
問い合わせや依頼の変化(3~5月)については「90%近くの企業で既存取引先の医療機関からの問い合わせや依頼に変化があったと回答。変化内容の大半は医療機関から問い合わせが『増加した』ことだった。約85%の企業で取引のない医療機関や医療機関以外の施設から問い合わせや依頼があったと回答した」と語った。
適正使用支援業務への影響(3~5月)については「適正使用支援業務の中でも立会いや短期貸出し・持込みへの影響が大きく、70%近くの企業で減少した。メーカーの訪問禁止により、販売業社がメーカーに代わり立会いを実施しなければならない状況も一部あったようだ」との結果を発表した。