新型コロナ対応で「緊急提言」【医療機器の議員連盟】
必要な医療機器を迅速に提供へ
「優れた医療機器を世界に迅速かつ安全に届けるための議員連盟」(会長=鴨下一郎氏)は、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する、新型コロナウイルスと戦う医療現場の最前線に必要な医療機器・材料を迅速かつ着実に届ける10項目からなる「緊急提言」(下記参照)をまとめた。経済産業、厚生労働両省に申し入れた。
緊急提言では、人工呼吸器の着実な確保に向け、感染拡大時に必要な人工呼吸器などの推計・確保、都道府県間の広域調整の事前検討、必要な人工呼吸器の台数目標の策定、一部の医療機関の必要以上に過度な備蓄・買占めを防ぐ指導、廃棄処分前の人工呼吸器の再利用――などを提案した。
人工呼吸器の多くが海外から輸入しているため、海外取引メーカーへの注文が世界各国から殺到し納期の確定ができない状況を憂慮し、政府が輸入先国との外交交渉を通して迅速な解決を図り、想定以上の感染拡大を念頭に、国内在庫の国外への流出防止や輸入増に向けて必要な措置を講ずるほか、バッテリーなど国内調達の可能性のある部品はメーカーの承諾を得て国内調達に切り替えを検討する――などを掲げた。
重篤患者に使用するECMO装置(人工肺を含む)については、全国の医療機関で使用可能な台数は約800台で、ECMO装置の国内企業(テルモ、泉医科工業)で概ね供給され、テルモは生産拡大計画を検討しているが、医療機関がECMO装置を確保できるよう必要な予算の確保を促した。
ペースメーカーやカテーテルなど医療材料の安定供給に関しては、ペースメーカーとカテーテルの大半が輸入品のため今後、安定した供給に支障が生じる可能性を憂慮。今後の動向も含めしっかりと情報を把握することを示し、業界団体(日本医療機器工業会、日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会)を通じて、安定供給の状況をモニタリングし、想定されるリスクに対応するため政府間での交渉に注力する――ことなどを記した。
PCR検査や迅速診断キットに関しては、国産のものもあるが、大手は海外企業であるため、国内での開発の推進を強調した。
単回使用医療機器(SUD)再製造の活用にもふれ、コロナウイルス感染拡大の有事にあっては、医療機器の安定供給やコスト削減の経済的見地からも、SUD再製造品の活用を早急に促進すべきだとした。
日本は医療機器の海外依存度が高いため、有事の事態では安全保障上で問題があることに言及し、国内で人工呼吸器を生産する企業の育成や、国内生産分を国で買い上げ・備蓄、生産施設の増強への補助措置、医療機器の製造に欠かせない素材・部品などの異業種からの供給――などの強化を盛り込んだ。
医療機器を扱う企業担当者の防護の重要性も指摘。医療機器の納入などで医療機関を訪問せざるを得ない医療機器企業の営業担当者などの感染防止対策品が不足している現状を鑑み、医療従事者の感染防止に加えて、医療機器企業の担当者の感染防止も万全の安全対策を講じる必要性を訴えた。
そのほか、医療機器分野の有事対策についての国際的ガイドラインづくりを、官民連携の上、日本として強いリーダーシップを発揮すべきことや、マスクの高額転売問題などに端を発し、医療用品の適切な転売行為の推進を求めた。
医療機器議員連盟の「緊急提言」
① 新型コロナ感染拡大にともなう必要な人工呼吸器などの数値目標の設定と着実な確保
② 外交交渉を通じた官民連携による人工呼吸器などの輸入の迅速化
③ ECMO装置(人工肺を含む)の確保と必要な人材育成
④ ペースメーカー・カテーテルなど医療材料の安定供給
⑤ PCR検査や迅速診断キットの国内開発の促進
⑥ 単回使用医療機器(SUD)再製造品の活用促進
⑦ 医療機器の海外依存からの脱却と国産化推進と備蓄
⑧ 医療機器を扱う企業担当者の防護による安全環境の確保
⑨ 医療機器分野における国際協調・協力推進の強化
⑩ 適切な転売行為の推進に向けた指導