年頭所感

年頭所感 「庚・子(かのえね)」の年、良い兆しが【商工組合 日本医療機器協会 理事長・中島孝夫】

中島理事長

謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年も皆様方のご指導、ご協力を賜りたく、何卒宜しくお 願い申し上げます。

昨年は、5月に令和という新たな元号に変わり、新天皇陛下がご即位され、まさに新しい日本の黎明を告げる一年でした。また、ラグビーワールドカップではベストエイト達成という偉業を成し遂げました。その勢いをもって本年に入り、奇しくも本年は十二支の最初である「子年」ということで、再び新しい十二支のサイクルがスタートする年でもあります。元号が令和になってから初めてのお正月が「子年」(庚子:かのえね)から始まるとは、何とも不思議なタイミングではないでしょうか。

そして閏年、この意義ある年に東京2020オリンピック・パラリンピックが、ここ東京で開催されることは、何かビッグチャンスが訪れる兆候すら感じさせます。

一方、米・中関係、日・韓関係の先行きも心配になります。本年春には習近平(シー・ジンピン)国家主席が来日される予定で、元首として公式訪問は08年以来で、両国は12年ぶりの節目を迎えます。日中関係の更なる改善を期待したいものです。ともあれ平和を第一として、日本経済はもとより世界経済が発展されることを切に願うものです。

ここで、わが業界を見てみますと、医療機器産業は、医薬品とともに日本の「成長産業」と位置づけられおり、現在の医療機器市場の規模は約3兆円との見方もあり、年々伸び続けています。

また、政府が提唱する「Society5・0」といわれる、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」も、革新的医療機器創出においての、1つのキーワードとなっています。「Society5・0」は人間中心の社会を目指しているとのこと。その中で、今やAI化が進むことにより、人の働く場所を奪いとられるという心配も出てきています。たとえば銀行の窓口や、ホテルのフロントもAI、ロボットに取って代わるといわれています。そこへスーパーコンピューターを遥かに凌駕する計算能力を持つ、量子コンピューターが出現したり、また、昨年度からも騒がれている通信速度5G(第5世代)という世界、現在の1Gbpsから20Gbpsと、通信速度が20倍になる。その他、詳細は省略しますが、自動車の自動運転や、オペ室での遠隔操作など様々な恩恵を享受することは間違いないと思いますが、どのような環境になっても、一人の人間の大切さを忘れない社会であって欲しいと願うものです。

さて、このような環境下で、日医機協は、本年も、医薬品医療機器等法をはじめ、会員企業の業務に係る関係法令の講習会開催などに努めてまいります。具体的には昨年に引き続き協会事業として以下の重点8事業を展開して参ります。

1.各種講演会の開催

医療機器産業を取り巻く経営環境の変化に対応し、多種多様な情報取集に努め、会員企業にとって有益な情報を提供します。

平成18年度より実施している「医療機器販売業等の営業管理者及び医療機器修理業責任技術者のための継続的研修」の実施、そのほか、「わかりやすいQMS講習会」、「診療報酬講習会」などを開催します。

講習会は、東京都をはじめ、PMDA、所管の行政庁にもご協力をお願いしながら、強力に展開してまいりたいと存じます。これらの講習会の開催も、長年、医療機器産業を支えてこられた中小の会員企業が医薬品医療機器等法をはじめ、法規制にも円滑に対応できますよう、情報提供として少しでもお役に立ちたいと願っています。

2、医工連携事業の推進

平成25年度より継続して取り組んでいる医工連携では、令和元年度も、全国の各県並びに各地区の公益産業振興センターとの共催で展示・商談会を開催いたしました。この本郷展示・商談会も今年で7年目を迎え、製販企業と、ものづくり企業との間で、マッチングの成果も出始めております。幸い、この展示・商談会は、当協会が所有する医科器械会館で開催することもあり、東京・本郷地区より、全国有数のものづくり企業を見ることができます。

その意味から、本年度もこの医療機器産業が集積する文京区の本郷台地を「メディカルヒルズ本郷」と標榜し、継続して当協会の医工連携のキャッチフレーズとして、全国に広げていき、マッチングの成果も重ねていきたいと考えています。

3、国際モダンホスピタルショウの活用

毎年夏に開催される当展示会は、延べ約8万人参加というビッグイベントです。昨年は当協会のエリアにミニプレゼンのステージを併設したところ大変に好評を博し、「次回もやって欲しい」との声を多くの方からいただきました。特に参加企業のプレゼンターで、初体験という社員の皆様からは研修の一貫になります、と喜ばれました。本年も団体としての参加を通じて、出展会員企業の皆様とも協力しながら大成功に収めたいと思います。合わせて各企業の「市場開拓・販売促進事業」の一貫になればと思います。

4、関係官庁との連携

関係官庁との連絡会や、公益財団法人医療機器センターへの協力などを通じて、医療機器業界の方向性や課題、医薬品医療機器等法をはじめ法制度の検討に関わり、厚生労働省、経済産業省等の行政機関に対しても積極的に要望・提案を行います。特に医療機器法の制定に向けて前進できればと思います。

5、会員企業間の交流

製造、販売およびサービス業など、業態の枠を越えた企業間の交流に努めるほか、全国の中小企業団体や企業とも協力関係を築いていきます。協会の伝統となっている会員企業の皆様のための野球大会、ボウリング大会、そしてフットサル等の事業を福利厚生の一貫として皆様とともに続けて参りたいと思います。

6、会員のための医科器械会館

協会の活動拠点である当会館は、会員企業の皆様が気兼ねなく、自由に立ち寄っていただく場として活用していただき、会議室も安価で提供できますので、自社の会議室のごとくご使用して頂ければ幸いに存じます。これからも快適性と永続性の確保を図り、会員のための使いやすい会館として管理・運営を行って参ります。

7、災害対策・災害救援活動・BCPなどの研究

医療機器団体として大災害に備えた対応を検討します。なお、日医機協は、戦前より会員企業のご協力により、災害時には救援物資や義金を提供するなどの活動を行っている歴史があります。今後も変わらぬ姿勢で参ります。

8、創立110周年へ向けて

10年刻みで歴史の記録を残し、あとに続く後世の方々のためにお役に立てるよう、編纂したいと思います。

以上のような8項目の中で、特に推進していきたい最大の課題の一つは、医療機器法の早期制定です。医薬品と医療機器とでは全く性質を異にするものを同じ法律で縛るには、無理があることをすでに承知しながら、今だに進展しないままでいます。これは医療機器産業界にとってマイナス以外の何物でもないと思います。協会として、他の団体とも協力し、制定に向けて少しでも前進していけるよう声をあげ続けて参りたいと思います。

最後に、全国の医療機器業界団体の皆様、そして、医療機器に関連するものづくり企業の皆様とも交流・連携を深めながら、日本の医療機器業界の発展に、少しでも貢献したいと考えております。

皆様のこの1年のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げ、また、当協会へのご指導とご鞭撻を心より、重ねて、お願い申し上げて、新春の挨拶に代えさせていただきます。