医工連携

スマート治療室で遠隔医療【広島大学、NNTドコモ】

5G接続実験に国内で初めて成功

広島大学とNTTドコモは、第5世代移動通信方式(5G)をスマート治療室「SCOT」に適用した遠隔医療支援フィールド実験に国内で初めて成功した。これにより、これまで難しかった緊急の脳外科手術などで熟練医が不在時でも移動先などの遠隔地から高度医療支援を行うことが可能となり、医師偏在の解消など地域医療の課題解決に貢献する。

実証実験では広島大学病院内にあるSCOTと、ドコモ中国支社内に設置した「モバイル戦略デスク」(医局)を5Gで接続。SCOT内で脳外科手術を行う執刀医に対して、遠隔地に設置したモバイル戦略デスク側の熟練医がリアルタイムで遠隔手術支援を行うシステムの5Gによる継続性を検証した。

内容としては、SCOT側から磁気共鳴画像診断装置(MRI)や手術顕微鏡の高精細画像のほか、患者のバイタルデータなどを戦略デスク側にリアルタイム伝送した。戦略デスクの熟練医は、SCOTの執刀医と同じ映像とデータを確認しながら、操作介入による手術支援を実施した。データ伝送時のスループット(単位時間当たりの処理量)やSCOT操作時の使用感に関する定量・定性評価を行った。

今回の実証実験では5月に広島大学とドコモが結んだ「次世代移動通信方式5G等を活用した研究協力に関する協定書」に基づき実施した。2020年春には広島大学を5Gエリア化し今回の実験プラットフォームの本格運用に向けた検証を行っていく予定だ。

SCOTは手術室のMRIなど数多くの医療機器から入力された手術映像やバイタルデータなどの多様な手術データを統合的に連携・可視化し、手術精度や安全性を向上させる高度医療システム。日本医療研究開発機構(AMDD)の支援のもと、5大学11企業が連携して開発に取り組んでいる。