業界団体

「高度医療・医学フォーラム」開催【日本・インドネシア医療連携協会】

『放射線画像診断とAI診断技術』テーマに

フォーラムには、インドネシアの多くの医療従事者が参加した。

特定非営利法人(NPO法人)日本・インドネシア医療連携協会(理事長=楠田聡氏、JIMCA)は、昨年に引き続き「第2回高度医療・医学フォーラムAMMF(Advanced Medical and Medicine Forum)2019」を7月23日、インドネシア・ジャカルタ市内のホテルムリアで『放射線画像診断とAI診断技術』をテーマに開催した。日本の医療知識・技術に関する情報を現地の医療従事者に提供した。当日はインドネシアの医療、放射線技術の関係者約500名が出席し、熱心に勉強した。JIMCAは医療機器の輸出入および製造販売を手掛けるジェミックの関恕夫社長が発起人となり設立された。当日はJIMCAとインドネシアの国営・プルタミナ病院を運営するプルタミナ・ビナ・メディカの間で、ジェミックが立会い、日・イ両国の医療産業の発展に貢献することを目的に「覚書」に調印した。

インドネシアの医療の質向上へ

第2回高度医療・医学フォーラム(AMMF2019)には、日本から放射線診断を専門とする著名なドクター2名、救命救急を専門とするドクター1名、そしてインドネシアから放射線専門ドクター1名の講演が行われ、日本の英知をインドネシアの医療従事者に学んでもらい、さらに両国の医療連携とビジネス交流を深めた。

オープニングタイムとなった午前10時、第2回高度医療・医学フォーラムはJIMCAの楠田理事長の開会あいさつで幕が開く。

楠田JIMCA理事長

楠田理事長は「本日は高度医療・医学フォーラムにご参加いただきありがとうございます。関係者の多大な努力により、このようなすばらしい第2回フォーラムを開催できたことは、私にとって大きな喜びであり光栄です。今日、私たちはまた多くの著名なゲストをお迎えします。このフォーラムは、プルタミナIHC病院グループと共同で昨年から開催されています。

このフォーラムの目的は、日本とインドネシア共和国の医療施設や福祉施設の質を向上させ、両国の国民の健康を促進することです。今年は『放射線画像診断技術とAI診断技術』をテーマに、日本から3名の医師による講演を予定しています。そして今年、創設されたばかりのNPO法人日本インドネシア医療連携協会とプルタミナIHCとの間で覚書を交換します。このフォーラムが皆さんにとって有意義で思いで深いものになることを願っています」とあいさつした。

インドネシア側からの来賓として国営企業省特別スタッフ第5大臣のHardy Rahim氏と、保健省のHadian Rahim氏から本フォーラムへの成果に対する期待と歓迎のあいさつが行われた。

高度医療で「アジア健康構想」に貢献へ

石井大使

ここでスペシャルゲストの在インドネシア日本大使館・石井正文特命全権大使から「第2回高度医療・医学フォーラムが開催されることを心よりお祝い申し上げます。本フォーラムにつきましては、昨年度の主催者であるジェミック(JMIC)が主体となって設立したJIMCAのリーダーシップにより、今年も開催が実現したと承知しております。本日の開催に至るまでの関係者のご尽力に対し心より敬意を表します。

日本は、インドネシアを含むアジア各国において、健康長寿社会の達成を通じた持続可能な経済成長を実現するため、『アジア健康構想』を推進しております。アジア健康構想とは、SDGsの目標の1つである『Universal Health Coverage』の達成への貢献に向けた政策提言であり、アジア諸国と日本との間の相互互恵的な関係の構築を基本理念としています。

本日のフォーラムのテーマは『放射線画像診断技術とAI診断技術』です。日本では診断におけるAIの活用について検討が進められており、これは日本が得意とする分野でもあります。『アジア健康構想』においてはICTやロボットといった新しい技術も活用した高度で質の高いサービスをアジア地域で提供することをめざしており、このフォーラムが人口の増大、生活習慣病への対応など、新たな課題に直面するインドネシアに日本の優れた医療技術の導入を促進する契機となるとともに、インドネシアにおける医療事情の改善、ひいては両国の医療分野で相互互恵的な関係の進化に資するものとなることを期待しております。

日本とインドネシアとの関係では、昨年末にインドネシア独立100周年にあたる2045年に向けた政策提言である『プロジェクト2045』が策定・公表されました。プロジェクト2045では達成すべきターゲットの1つとして『2030年持続可能な開発目標(SDGs)を超えた高い生活水準の達成』を提示しておりますが、その達成には健康・保健分野の取り組みが不可欠であることは論を俟ちません。2045年に向けて、本フォーラムがその目標の達成にも貢献するものとなることを期待しております。今後も、医療分野での両国の交流が拡大し日本およびインドネシアの両国の友好関係がますます深まることを祈念しています」と祝辞を述べた。

高齢化対策は早期発見・治療が重要

江崎調整官

また、同フォーラムをバックアップする経済産業省政策統括調整官兼厚生労働省医政局統括調整官兼内閣官房健康・医療戦略室の江崎禎英次長からは「日本、インドネシア両国の協力の下、第2回高度医療・医学フォーラムがかくも盛大に開催されますこと心よりお喜び申し上げます。日本の経験や取り組みを活かしてインドネシアの皆さまが、より健康で幸せな人生を送っていただくことは、まさにJIMCAの設立趣旨にかなうものと考えます。

ヒトの生物学的な寿命は120年と言われています。経済が豊かになり、衛生環境が改善すると、人々の平均寿命は延び、社会は高齢化します。日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えました。『高齢化』に対してはネガティブなイメージを持つ人も多いのですが誰もが長生きすることを望み、それが実現すれば、社会は必然的に高齢化します。言ってみれば高齢社会は人類の理想でもあるのです。いまや日本は誰もが100歳まで生きられる『人生100年時代』を迎えつつあります。

人生100年時代を健康に過ごすためには高齢化の下で進む、ある変化に対応することが必要です。それは病気の性質が変化していることです。長きにわたって私たちを苦しめてきた病気の中心は感染症でした。感染症の治療には、いかに良い薬を開発するかが重要です。日本もかつては結核で多くの人々が命を落としていたのですが、抗生物質によって結核による死者は劇的に減少しました。

現在、感染症に変わって増えているのが、がんや糖尿病に代表される生活習慣病です。感染症は原因となる細菌やウイルスが体の外から入ってくることで発症します。他方、生活習慣病は体の中にある複数の要因が関係します。このような疾患は、重症化して自覚症状が出てからでは治療は極めて困難です。いかに早く発見し、適切に対応するかが重要です。

このため日本では、最先端の技術を駆使した診断装置の開発に注力しています。また、複数の要因が関連する疾患では、複合的な情報を解析するためAIの活用も重要になります。こうした診断技術によって、的確な治療を可能にするとともに、潜在的な疾患の早期発見による予防や進行抑制が可能になり、患者のQOLを大きく向上させることが期待されます」と述べた。

ジェミックの関社長(中央)を見届け人に、フォーラム主催者のJIMCAの楠田理事長(左)とインドネシアのプルタミナ・ビナ・メディカのファテマCEOは日・イ両国の医療産業の発展に貢献することを目的に「覚書」に調印した。

ここでジェミックの関恕夫社長が見届け人となり、フォーラム主催者のJIMCAの楠田理事長と共催者のプルタミナ・ビナ・メディカのファテマCEOとで「調印式」が行われセレモニーを終えた。

小憩の後、講演会となり杏林大学医学部放射線医学教室の似鳥俊明名誉教授が『CTおよびMRIの最先端』、京都大学臨床教授で大原記念中央医療機構倉敷中央病院の小山貴医学博士が『臨床のCTとMRI』、厚生労働省DMAT局の小井土雄一局長が『救急医療の標準化の重要性と質の向上を目指した更なる試み』を、それぞれテーマに講演した。

日・イ両国の医療交流の懸け橋に

講演後は、GEヘルスケアインドネシア、パラマウントベッドインドネシアからプレゼンテーションが行われたあと、最後にジェミックの関社長から「本年、私が発起人となり新たにJIMCA(Japan Indonesia Medical Collaboration Association)を設立しました。このNPO法人は日本の医療機関とインドネシアの医療機関、両国の医師、技師、看護師に至るまでの人々の交流の懸け橋となるための機関として設立されたものです。そして今年はこのJIMCAが主催し、IEC(インドネシアヘルスケアコーポレーション)が共催という形でこのフォーラムを終了することが出来ました。勿論、来年もここジャカルタにおいて、高度医療・医学フォーラムがJIMCAとIHCが共に手を取り合って開催されます。今回のフォーラムに携わった多くの方々、参加された皆様に感謝申し上げます」と謝辞を述べ閉会した。